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2016年5月13日 (金)

ダムに沈む吾妻線と大子線跡を訪ねる(2004年11月27日)

以前、VIEWカード会員向けにJR東日本の公式鉄道ファンクラブ「Rail-On」クラブという会員組織がありました。今回は、Rail-Onクラブで募集のあったツアーの参加記録です。

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JR東日本公式鉄道ファンクラブ「Rail-On」クラブの会員には毎月会報がくる。その会報には、会員向けのマニアックなツアーの募集があり、その中にこのツアーのお知らせがあった。
料金が13000円と手頃で、内容も興味深いものだったので、今回初めてこういったツアーに参加してみることにした。
 

2004年11月27日

かつて東北・信越・上越線方面に次々と特急・急行列車が発車していた上野駅地平ホーム。今日はこの15番線ホームから出発する。発車の20分ほど前に入線、大勢のファンが撮影を始めた。残念ながらヘッドマークは「臨時」表示で、ちょっとがっかり。
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駅でコーヒーを買って指定された席に着く。そして7時25分に発車。

乗った車両はほぼ満席だ。どうやら指定された席の回りは全員ツアー客のようで、カメラや時刻表などを持っている。近くには家族連れもいた。
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特急「白根」の行き先表示。現役当時の駅名は、「長野原」だった。

ツアーの募集は上野のほか赤羽・大宮からのみなので、それ以降の駅では乗降の動きはないが、トイレに立ったときにほかの車両を見たら空席が目立つ。5分前に同じ方面に向かう特急「草津1号」があるのでこんなものだろうか。沿線ではこの列車を撮影するファンに混じって手を振る小さい子供のかわいい姿も見られた。

高崎ではSL「D51 498」の姿が見られた。客車には「SL試運転」と表示されており、水上まで一往復するのだろうか。
渋川から吾妻線に入る。急にローカル線の色濃くなり、紅葉も楽しめる。
終点まであと一駅、川原湯温泉駅では反対列車待ち合わせのため4分ほど停車。この時間にホームに降りてみたらヘッドマークが絵入りの「白根」になっていた。上野発車直前になって変えたのだろうか。そして終点の長野原草津口には10時15分に到着。3時間弱の列車の旅だった。
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長野原草津口に到着

駅ではツアーの受付をするのだが、受付は連れにおまかせしてしばらく駅で撮影をしていた。大勢のファンのなか何とか撮影をして改札をでると、連れはバスに案内されているところ。一番に受付してもらったそうで、連れのおかげで自由席のバスは助手席側一番前の特等席に座れた。
ツアー客の募集人数はこのバスの定員で決めたよう。全員の受付が済みバスに乗って最初の目的地へと出発した。
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長野原草津口駅からはJRバスで移動

バス車内では、吾妻線の一部が沈むことになる建設中の八ツ場(やんば)ダムの資料や、大子線のあった昭和43年の時刻表のコピーなどが配られた。そして、ツアー参加記念として、大子駅の硬券入場券と白根号の乗車記念券が配られた。
バスは国道を渋川方面に向かい、樽沢トンネルの近くに停車。トンネルの近くの国道は車を置いておくスペースがないため、離れたところで降りて歩く。ツアーなので添乗員の旗について5分ほどでトンネルに着いた。
旅行でツアーをよく利用する連れのアドバイスによれば、歩くときは添乗員のすぐ後ろを歩いたほうがよいそうだ。添乗員のいろいろな話や説明を聞きやすいし、前に人がいないから写真もとりやすいのだとか。

もうすぐ特急列車が通過するそうで、カメラを準備して列車を待つ。しばらく待ってから、上野行きの特急「草津4号」が通過していった。
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日本一短い樽沢トンネルを抜ける特急「草津」


このあとは吾妻渓谷を見ながらしばしの散策。流れが速く、カーブや川幅の狭いところなど、変化があって楽しい。紅葉はもう終わりごろだそうだが、それでもところどころに色づいた葉が鮮やかだ。
しばらく渓谷沿いを歩き、そろそろ空腹も感じたころ、国道沿いのドライブインで昼食となった。
箱詰の弁当が出るかと思ったら、とろろ汁に茶碗でご飯と味噌汁、そしておかずの小皿が並ぶ料理で満足。食後は近くの川原湯温泉駅前からバスで出発するまでフリータイムとなった。
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本日の昼食

吾妻渓谷は渓谷に沿って遊歩道があり、食後に少し歩いてみた。小さい滝がいくつかあり、落ち葉を踏みながらの散策が楽しめる。ダム着工後も一部の渓谷は残されるようだが、ぜひもう一度、景観の変わらないうちに遊歩道をじっくりと歩いてみたいものだ。
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少しだけ渓谷を歩いてから川原湯温泉駅まで歩く。ダムが完成すると湖の底に沈んでしまう。待合室に入ってみると窓口の駅員が弁当を食べているのどかな駅だ。
皆思い思いに撮影をしてバスに戻る。が、もうすぐ特急列車が到着するそうで、そのあとで出発するそうだ。すべては撮影対象の列車によってツアーの時間が決まるといっても過言ではない。
せっかくなので到着の様子を待合室から眺めてからバスに戻った。
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将来ダムの底に沈む川原湯温泉駅
ダム完成後は少し離れたところに新駅ができる


川原湯温泉駅を出発して次はいよいよ太子線(正式名称は「長野原線」)跡に向かう。長野原(現在の長野原草津口)から大前までの延長開通と引き換えに、太子までの路線が昭和45年に廃止された。すでに30年以上経過している鉄道の遺物がどれだけ残されているか楽しみだ。
まずは長野原草津口駅に程近いポイントへ。現在も使用中の吾妻線の鉄橋に並んで太子へ向かう路線の鉄橋が残されていた。
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太子線廃線跡に残る鉄橋
撤去するには費用がかかるからなのか、それとも太子に向かって鉄道があったことを将来に伝えるために残しているのか。いずれにしても、人気の少ないこの場所で一際その存在感をこの鉄橋は主張していた。

さて、この鉄橋からは吾妻線の現役の鉄橋も見渡すことができる。まもなく上り普通列車が通過するとのことで、樽沢トンネルに続いて撮影タイム。
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ここの撮影ポイントは実は墓地の中にあり、あまり居心地のいい場所ではない。ここには工事の業者がいて昼休みをとっていたが、観光バスで墓地に乗りつけ、鉄橋に向かって一斉にカメラを向けるこの団体が彼らにどのように映ったのだろうか・・・。通り過ぎる車からも場違いな団体にこちらを見ていた。

列車の撮影が終わり、バスに乗ってさらに太子方面へと移動する。次のポイントではは太子線の2つのトンネルを見学する。
国道から分岐する細い道にバスの頭が突っ込んだ状態で下車。この細い道こそがかつての線路跡なのだそうだ。しばらく歩くと国道の下にトンネルが口を空けていた。
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1つ目のトンネル
中は照明などは一切ないが、現在も道路として使用されており、補修もなされているようで崩落のような危険はない。天井に黒ずんだ汚れが見えるが、これは現役当時の蒸気機関車のすすだろうか。いや、すでに30年以上が経過しているのにすすが残っているわけないだろうが、あれこれ想いをめぐらすのはたのしい。

1つ目のトンネルの少し先に2つ目のトンネルがあった。こちらのトンネルはやや長く、懐中電灯があると便利だ。路面は舗装こそされていないものの、歩きにくいということはない。このトンネルを出たところでまたバスへ戻る。
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2つ目のトンネル

さらにこのあとは太子駅跡へと向かう。このまま線路跡をたどっていけば着くことができるが、大型バスがトンネルを通過できるかどうか微妙とのことで、一旦国道に戻った。

太子駅跡にはいくつか鉄道施設の名残があった。一番目立つのは、産出した鉄鉱石を貨車に積み込む設備のホッパーだ。内部は背の高い草が生えているが、現役当時の様子をよく伝えている。
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ホッパーは現役当時の名残

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ホッパーの内部
ほかにコンクリート製の車止めもあり、ここに鉄道があったことを静かに物語っている。ここでしばらく過去の栄華を想像し、バスに戻る。
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太子駅跡の車止め

今日の見学はすべて終了し、後は駅に戻るだけ。短い時間だがいろいろと楽しめた。駅に着いて解散となった。
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ホームへ入線のための入れ替え
      ヘッドマークは「草津白根」になっている

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帰りは白地に文字だけの「白根」で運転された


駅では帰りの「白根号」を撮影して時間を過ごし、列車に乗って気づいたら発車時刻だった。だんだん日も暮れてきたので車内は静かだ。大宮、赤羽と三々五々降りていき、定刻に終点の上野に着いた。

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吾妻線の線路の付け替えはこのツアーから10年後の2014年10月に完成し、現在では新しい経路で運転されています。また、Rail-Onクラブは2008年で終了し、現在は鉄道博物館の会員組織に引き継がれています。

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